・ここで説明する内容は、関東以北などの地域にはあてはまらないと思います。あらかじめご了承ください。
      

 芝生の管理は大変か?(日本芝の張芝限定です・・・)

「芝生にはあこがれるけど、管理が大変だから・・・」
「芝生は、管理が大変なので使うのをやめてほしい。」
ガーデンデザインの打ち合わせにいって、よく聞く言葉です。
雑誌などにも「芝生は管理が大変である。」とよく書かれています。     

でも、本当に芝生の管理は大変なのでしょうか?     

結論から言うと、みなさんが思っているほど大変ではありません。(あくまでも主観ですが・・・)
もちろん、芝生は植物なので、ある程度の管理は必要ですが、ゴルフ場やサッカー競技場のような均一で美しいターフを望まないのであれば、そんなに難しくないし、面倒でもありません。
管理が面倒だからと言う理由で芝生をあきらめていらっしゃるみなさん、とりあえず一度、芝生を張ってみてはいかがでしょうか?     


芝生を薦める理由

①何といっても「安い」です。コストパフォーマンスに優れています。芝生の材料だけなら1平方メートル(1m×1m)当たり350円~1200円程度です。     

②芝生は病害に強く枯れにくい植物です。少々のことでは枯れません。たとえ枯れても再生能力が高いので、春から夏(暖地性の生育シーズン)であればすぐに復活します。     

③裸地のままよりは雑草が生えにくいです。葉が密になればなるほど芝生が雑草の進入を防ぎます。芝生の中に雑草が進入してしまうと抜きにくいのは確かですが、そこまで雑草に神経質になる必要はありません。雑草も一緒に刈ってしまいましょう。近くで見なけりゃわかりません。     

④それでも雑草、枯れなどで収拾がつかなくなってきたら芝生を剥がせばいいんです。そこであきらめて断念するのもよし、芝生は単価も安いので、再挑戦するのもいいと思います。
      

 芝生の種類と選定

芝生は、大きく寒地型と暖地型に分けられます。(以下のとおり)     

種  類 タ  イ  プ
暖地型芝生(夏芝)  日本芝(野芝、普通高麗芝、広葉高麗芝、姫高麗芝)
 西洋芝(バミューダグラス類)など
寒地型芝生(冬芝)  西洋芝(ベントグラス類、ブルーグラス類)など
 

オススメは、日本芝です。冬になると生育を停止して表面が茶色く枯れた状態になりますが、なんといっても日本の気候に適しているため管理が楽です。(冬枯れした芝生も季節感があって私は好きです。)
西洋芝は個人庭には向いていません。管理が大変ですので、「ものぐさ」なかたには無理です。     


オススメの日本芝ですが、日本芝といってもいろいろと種類があります。
以下、主な日本芝の種類と特徴についてまとめたものです。     

名   称 特   徴
野  芝  環境適応性が高く、丈夫で土壌をあまり選ばない。
 寒さに強く踏圧にも強いため、利用の激しい場所に最適な芝生。
 葉幅が広く、芝質はやや粗いため、野趣っぽい。
 密度の高いキレイな芝生にはなりにくい。
普通高麗芝
オススメ!
 日本芝で最もポピュラーな品種。
 芝質は細かく繊細で、美しい芝生をつくる。
 緑色の保持性も高い芝生。
 塩水にも耐えるため、沿岸地にも適している。
広葉高麗芝
オススメ!
 普通高麗芝と比べてやや葉の幅が広く、密生度がやや低い。
 比較的やわらかくふわふわしている。
 生長がやや遅く、芝刈り回数を低減できる。
姫高麗芝
オススメ!
 高麗芝よりさらにきめ細かく、密生度が非常に高い。
 美しい芝生をつくる。
 少しチクチクする。
 葉の生長が早いため、刈り込み回数は多い。
 日陰に強い。

さらには、その日本芝の欠点を改良した改良芝があります。最近は、様々な種類のものが出回っていますが、ここでは、実際に使って良かったものを取り上げています。     

名   称 特   徴
改良野芝
(エルトロ)
 株式会社ニチノー緑化
 野芝と比較して、R> ①ターフ形成が速い。
 ②ダメージからの回復が速い。
 ③低刈りに耐え、刈高は10mm~80mmと幅が広い。
 ④乾燥に強い。
改良高麗芝
(ビクトール)
 株式会社ニチノー緑化
 高麗芝と比較して 、
 ①根茎の発達が良く、生育速度が速い。
 ②緑色が美しく、保持期間が長い。
 ③草丈がやや低く、きめ細かな美しいターフを形成。
 ④ダメージからの回復が速い。
改良高麗芝
(TM9)
オススメ!
 トヨタルーフガーデン株式会社
 高麗芝と比較して 、
 ①草丈が半分以下なので、芝刈り回数を低減できる。
 ②芝刈り回数が少ないため、施肥量を低減できる。
 ③節間が短いため、緻密なターフが形成される。
 ④葉が柔らかい。

芝生の選定

管理の容易さから判断すると、オススメの順番は、①広葉高麗芝、②普通高麗芝、③姫高麗芝となります。     

ただ、実感として、それぞれの管理頻度にあまり差はないと思いますので、どれでも良いと思います。
もし、ご自身で芝生を張る予定で、近くのホームセンターなどで購入されるのであれば、普通高麗芝になります。(最近では、姫高麗芝が売っているところもあるようです。他のものはまず売っていませんのでそれ以外に選択の余地はありません・・・。)マット状の切芝(ソッド)がおおよそ1平方メートル(1m×1m)当たり350円~500円程度で売っているようです。     

※ホームセンターなどで芝生を購入する場合は、入荷してすぐのものを狙ってください。そのなかで葉や根が高密度のもの、土の多くついたずっしりと重めのものを選定してください。管理で手抜きするためにも、いい材料を選ぶのはとても重要なポイントです。
もし材料の見立てに自信がなければ、近所の造園屋さんにご相談されてはいかがでしょうか?     

工事費が高くなってでも、管理を少なくしたい人には「改良高麗芝(TM9)」がオススメです。
芝生管理の中で一番面倒くさい「芝刈り」の回数を低減できます。これは使ってみるとけっこう「すぐれもの」であることが実感できます。
ただあまり市場性がなく、価格がかなり高いです・・・。材料のみ(送料別)で1平方メートル(1m×1m)当たり1000円程度です。ネットで販売されています。
      

 芝の張り方

以下、ものぐさな方にでもできる芝生の張り方を解説しています。ただ、手を抜くにも、最適な方法を理解していないと、いざというときの応用が利きませんので、「理想的な張り方」と「手抜きの張り方」を列記していますので参考にしてください。
ここに書いている方法(特に手抜きの方法)は、あくまでも私(芝生の専門家ではありません)の経験と私見に基づいているもので、これで枯れたからといって私が補償できるレベルのものではありませんのであらかじめご了承下さい。
※芝張りは、そんなに高いものではありませんので、業者に頼まれてもいいと思います。     

 植える場所

【理 想】
日当たりの良い場所 ・水はけの良い場所 ・風通しの良い場所、これだけそろえば言うことなしです。
 
【まぁ~これくらいならOK】
1日3時間程度以上は日の当たる場所で、ある程度水はけの良い場所。(常に地面が湿っているような場所は不適です。)とりあえずやってみましょう。
 

 植える時期

【理 想】
4~5月までの間が最適です。
 
【まぁ~これくらいならOK】
真夏以外であればいつでも構いませんが、4~5月に植えると、数ヶ月で均一なターフが形成されるし、張ってから芝が生えそろう間のトラブルが少なくなりますのでオススメです。
 

 下地づくり

【理 想】
①雑草は根から抜き、石などを取り除きます。
②土を20~30cmの深さまで耕し、やわらかくする。元肥となる鶏糞・油かすなどの有機質肥料を1m2当たり2kg程度よく混ぜあわせます。
③石灰を1m2当たり100~200gふりまいて、4~5日、殺菌のために日光にさらします。
④表面をある程度締め固めて、平らにならします。
 
【手抜き】
立鎌などで土を軽く耕しながら、雑草を根から取り除いた後、表面をある程度締め固めて、凸凹のないように均します。(地盤が粘質土の場合は10cm程度土を耕し、砂かパーライトなどを20%程度混ぜ合わせ、通気・透水性を高める。)
※切芝は厚みが2cmくらいありますので配慮してください。
※雑草はきれいに取り除きましょう。
※土はできるだけきれいに均しましょう。細かい凹凸はうろうろ歩き回るとよくわかります。
※肥料・石灰は基本的には不要です。
 

 張 芝

【理 想】
マット状の切芝(ソッド)をベタ張り、もしくは目地張り(目地幅4~5cm)にします。目地は十字にせず、互い違いに配置しましょう。
 
【手抜き】
ベタ張りがよいでしょう。(ベタ張りは、均一なターフができるまでの時間が短く、その間の雑草の進入を最小限に抑えられます。)
 

 目土・散水

【理 想】
芝生の上から、ふるいを使って葉が隠れない程度に目土(川砂、山砂、洗い砂など)をかけます。(1m2当たり4~5リットル程度)目地にも十分にかけること。
ほうきやレーキなどで土をよく芝にすり込み、凹凸をなくします。その後、水をたっぷり与え、2週間ぐらいは水やりや雑草とり以外は芝生に入らないようにします。
 
【手抜き】
ふるいを使う必要はありません。面積が狭ければ、ホームセンターなどに「芝の目土」が売っているのでそれを使ってもいいです。(価格はかなり割高ですが、手配などが面倒ではありません。)
秋~冬植の場合は散水は不要です。
 

 芝の管理

以下、ものぐさな方にでもできる芝生の管理について解説しています。ただ、手を抜くにも、最適な方法を理解していないと、いざというときの応用が利きませんので、「理想的な管理」と「手抜きの管理」を列記していますので参考にしてください。
ここに書いている方法(特に手抜きの方法)は、あくまでも私(芝生の専門家ではありません)の経験と私見に基づいているもので、これで枯れたからといって私が補償できるレベルのものではありませんのであらかじめご了承下さい。     

 芝 刈

【理 想】
20~30mm程度の刈高を維持してください。草丈が伸びてしまった場合は、草丈の1/3以上刈り飛ばさないようにし、少しずつ刈り込んで草丈を調節して下さい。
刈り込みは、ひんぱんに行ってください。頻度は以下のとおりです。
 ・5,6月~隔週(2回/月)
 ・7,8月~毎週(4回/月)
 ・9,10月~隔週(2回/月)
 ・計-年間16回
刈りカスはできるだけ集め、場内に残さないようにしてください。
芝刈り機は手動式と電動式があります。面積で選ぶと良いでしょう。壁ぎわや縁石の周りなど、隅の部分は、バリカンや芝刈りハサミを使うと良いでしょう。
 
【手抜き】
40~50mm程度の刈高にしましょう。(高めにすることで、地表まで光が届かず、雑草の侵入をある程度防ぐことができます。)
刈り込みの頻度は以下のとおりです。(最低基準)
 ・5,6月~1回/月
 ・7,8月~隔週(2回/月)
 ・9,10月~1回/月
 ・計-年間8回
手動式芝刈り機+芝刈りハサミで十分ではないでしょうか。(芝刈り機は絶対必要です。でないと長続きしません。)
※芝の管理は、「芝刈」が最も重要です。刈込んで芝の密度を高くすることで、美しく、雑草が生えにくい(管理しやすい)ターフとなるからです。ここで書いている芝刈り回数は最低基準と思ってください。複雑な張り方をしていなければ、そんなに時間はかかりませんので、時間を見つけてできるだけ理想の刈り込み回数に近づけるよう努力してください。(特に植付けた最初のシーズン)
 

 水やり

【理 想】
晴天の日が続いたら水をたっぷり与えます。
春は晴天の日が約6日続いた後に、夏は晴天の日が2~3日続いたら与えます。秋と冬は月に1~2回与えます。
 
【手抜き】
通常は水やりは必要ないでしょう。夏場に晴天乾燥が続き、葉にしおれの症状(葉が巻いてくる)が見られたら、午前中の涼しい時間帯に、土にも水が浸透するよう充分に散水を行って下さい。
ただし、張芝直後の養生期間(2週間程度)は、土が乾いたら散水してください。
 

 除 草(除草剤を使用しない場合)

【理 想】
年間を通して手取り除草・除根を行ってください。手取除草をこまめに行うことが、最もきれいに雑草を除去できる方法です。
 
【手抜き】
芝生が枯れた時期には、緑色の雑草が目立ちますので暇を見つけて手取り除草を行います。(せっかく抜くなら根まで取りましょう。ホームセンターなどで良い道具が販売されています。)
夏場は、雑草も芝生と一緒に刈り込んでしまいましょう。また生えてきますが、いつも刈っていれば生えにくくなりますし、近くで見なけりゃわかりません。
 

 施 肥

【理 想】
肥料は、春から秋にかけての芝生の生育期に年2~3回施すのが基本です。
肥料の3要素である窒素、リン酸、カリがほぼ同量に配合された肥料を、月に1回程度、1m2あたり100g(2握りの量)を均等に施します。『芝生用』と表示されたものや、一般的な肥料でも十分です。肥料が少ないと全体的に緑が薄くなり、これが施肥の時期のサインです。濃すぎると肥料やけを起こします。また均一に施肥をしないと肥料ムラが出やすいので注意しましょう。
 
【手抜き】
春先に年1回でいいのではないでしょうか。
それ以外は、芝の葉が黄色くなってきたらその都度対応すればいいと思います。
 

 目 土

【理 想】
芝生面を平らにし、浮き上がったランナーを抑え、芽が出やすくするため、芽の出る春先に目土を行います。
目土量の目安は、茎の部分に目土が被って葉の部分は被らない程度です。散布後竹ぽうき等で目土をよく芝生にすり込んで下さい。 凹部分は目土により芝面の凹凸を修正して下さい。
 
【手抜き】
目土は毎年行う必要はありません。隔年もしくは3年に1度くらいで大丈夫です。
芝面の凹凸を修正するなら、春先、気になった凹部分に薄く散布して芝生によくすり込んで下さい。(一度に厚くしないように・・・。)その時、ついでに生育の悪そうな部分だけでも目土をやってあげてもいいでしょう。
 

 エアレーション

【理 想】
長い間使っていると土がかたまり、通気不良となり、芝生の根の発育が非常に衰え、老化が早くなります。そこで、芝生の状態が悪かったり、床土が硬くなっている場合など、改善が必要とされる場合に行って下さい。
一般的には春から秋にかけて年に1~2回と言われています。
方法としては直径は約2cmで、深さを7.5cm、間隔は7.5cm以下で、芝生一面に穴を空けます。
その後、肥料を混ぜた目土をすることによって、穴の中に目土が入り芝生の根から直接栄養を吸収することができるようになります。
 
【手抜き】
気不良、根の老化には、穴開け(コアリング)によるエアレーションは効果的です。
エアレーションは毎年行う必要はありません。隔年もしくは3年に1度くらいで大丈夫です。
もともと地盤の水はけ、通気が芳しくなく、芝の生育がいまいちの場合は、早速一度やってみてください。
 

 サッチ取り

【理 想】
サッチ(枯れ葉・茎・刈りカスなどが固まったもの)を放置すと、芝の水分、養分の吸収が悪くなります。サッチが堆積したら、ナイフで20~30cm間隔に浅い切れ目を入れ、レーキや熊手でかき出します。サッチを取り除いた後は、目土を入れたほうがいいでしょう。
 
【手抜き】
定期的に熊手で掃除をしましょう。時間があるときに熊手を強めに押さえつけながらやりましょう。
※芝刈り時には刈りカスをできるだけ残さないようにしましょう。
 

 その他のポイント

できるだけ刈りやすい張り方をしましょう。複雑な線形・壁際・立ち上がったエッジ(縁石)・芝生の中の飛石などはできるだけ避けましょう。     

エッジをきれいに揃えると芝生が2~3割は綺麗に見えます。エッジは縁石や専用エッジ材で止めるか、ターフカッターで切り揃えましょう。     

あまり多くは発生しませんが、発生してしまった病害に対しては殺菌剤を使用して原因となる菌を殺菌しましょう。園芸店や業者などに症状を伝え、適用殺菌剤で対処しましょう。     

ここぞという日?には、軽~く水を撒きましょう。「打ち水」です。水に濡れた芝生は綺麗です。
      

 芝管理の道具について

ここでは芝生を管理するのに必要な道具を紹介します。ホームセンターで安いものを探せば、全部揃えても、15,000円以内に収まります。
道具の値段はピンキリです。品質の良いもの、カッコイイものはやはり高価です。これから芝生に挑戦される方はとりあえず安価なものでも十分だと思います。     



 

 まとめ

長々と書きましたが、あまり高望みしなければ、結構手抜きもできることがご理解いただけたと思いますが、結局、きれいな芝生を維持していく上で、何が一番大事かと言えば、やはり「愛情?」をもって接してあげることです。     

芝生は「生き物」ですので芝の個体差、環境(気候・土壌など)の違いによって「管理方法」もちょっとずつ変わってきます。マニュアルどおりにはいきません。     

ただ、よく観察していれば、芝生が弱ったときにどう対処すればいいのかが何となくわかってくると思います。芝生は強いので、ある程度はトラブル発生後の対処で回復します。